〜災害レポート〜3月18日
コラム執筆者

NPO法人マザーシップ 代表
医療法人社団正裕会 理事長
井上レディスクリニック  院長
リボーンレディスクリニック 理事長

井上 裕子(いのうえ ゆうこ)

地震から1週間、テレビでは被災地の困難な事情が報道されています。
東京では時々余震がありますが、先週の金曜日に比べれば街は静かです。

月曜日から始まった計画停電は、
私のようなお産をやってる産婦人科医療機関では大変な事です。

分娩監視なしのお産、心電図や麻酔機のない手術や、
電気のない新生児室、保育器は想像が出来ずに悩みました。
18時20分から停電の予定でしたので、18時前に帝王切開は終了。
昨日は5人誕生しました。
そうして、やっと東京電力と連絡が付き、事務長の熱心な交渉が成立。
このクリニック施設は一応、当面の間は計画停電からは除外されました。
東京の電力供給がダウンすれば急な大規模停電が起こる可能性はありますが、
連日いろいろな時間帯に実施される計画停電を気にせずに済みます。
これまで以上に節電を厳しく実行して、ババシャツを着て診療しています。

しかし、医療品の入荷は全く不明、東北に工場がある薬品会社が崩壊。
代わりの薬品を探すにのに追われています。
不妊症の治療や産科では絶対に必要な薬もあり、苦労しています。
新生児のおむつも品薄です。
食材も、お米が売り切れるなど、流通がうまくいってないので、
職員給食は主食なしのスープだけにしました(ダイエットにいいかな・・)。

被災地から急な妊婦さんの転院も受け入れています。
関西や九州地方に里帰り分娩に変更する方も多いです。

それでも、過酷な被災地の方々に比べればと、口には出しませんが、
スタッフは黙々とお産の現場で、以前よりも優しい横顔で働いています。
赤ちゃんの泣き声に、これまで以上に、「生きるエネルギー」を貰っています。
テレビでも悲惨な光景と同時に感動のシーンに心を打たれます。
絆、チームワーク、家族愛、奇跡、命の大事さ・・・涙もろい1週間でもありました。

「もともと限界の産婦人科医療で必死に働いている」
……なんて粋がっていました(?)が、
新聞で福島原発の対応に当たっている人の
「決死で・・」という記事にハッとします。
これぐらいじゃ私は死にそうではありません。
という訳で、殆ど地震後遺症に追われ、当直の日々です。
おやつばかり食べていて太りそうです。

災害援助ですが、産婦人科医会・学会では、義援金以外に、
周産期に必要なお産セットやおむつ、消毒ナプキン、ミルク……など
数千万円分も集めて送りました。ちゃんと被災者に送れるらしいです。
組織が大きいので援助も大きいです。

理事をしている女性医療ネットワークでも、会員に「国境なき医師団」の女性医師がいて、
下着や薬品、化粧品サンプルや便利そうな日用品をいろいろをトラックに積んで、
あっと言うまに被災地に飛んでいきました。
義援金も集まる前だったので事務局から100万立て替え、渡しました。
今、募金中で、あちこちに義援金を振込みの私です。

こんな時。組織があった方が決定するスピードがあるなあ・・と感じました。
日本中で支援の輪が広がっていますね。
マミサミの皆さんもそれぞれの立場で募金や支援を実行中だと思います。
何かマミサミらしい支援?義援金?考えたいですね。

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