第4回 おっぱいにお金をかけましょう
コラム執筆者

NPO法人マザーシップ 代表
医療法人社団正裕会 理事長
井上レディスクリニック  院長
リボーンレディスクリニック 理事長

井上 裕子(いのうえ ゆうこ)

おっぱいにお金をかけましょう。

少子高齢化のこの国、女性は3人に1人ががんにかかり、3人に1人は死因ががんという時代です。読者の皆さん、がん対策、がんになった時の治療の貯えは大丈夫ですか?

子育て中のママ世代の家計はみんな必死できりもりしている世代。将来の子どもの学費は考えていても、まさか「がんの治療費」の事など考えたことはないと思 います。日本では医療保険制度がありますから、がんの治療は保険が適応されます。しかし、医学の進歩と保険の適応は追いつかないため、最新最良の治療は保 険がきかない自由診療もあります。また、入院する病室によっては差額ベッド代もかかります。

最近は乳房を全部取らない乳房部分切除が主流です。例えば、スタンダードな治療法の自己負担額は、乳房温存術(部分切除)+術前検査+手術代+全身麻酔+ センチネルリンパ生検(先進医療)+術後の点滴+入院・食事代+抗がん剤選択のための遺伝子検査+放射線治療(25回通院)、これで約34万円。個室に入 院すれば差額ベッド代が1日26250円、2人部屋で約9980円。乳がんの手術入院は平均で長くて1週間くらい。術後の抗がん剤や放射線治療は外来通院 です。入院保険は支給されません!

最近はやりの「がん保険」に加入していて、がんと診断されたらドーンと支給というタイプならいいですが、乳がんの入院治療は短期です。女性ががん治療して いるといろいろ出費もかさみます。内服の抗がん剤や併用されるホルモン剤などはどれも高価で、自己負担額は薬の種類にもよりますが、月に数万円単位です。

その他に通院費、リンパ浮腫予防用の手のサポーターは1万円くらい。医療用リンパマッサージは1回8000円くらい。女性が闘病すると、家事、育児にも大 きく影響があり出費も増えますね。温存術ですんでも、約5年間で200万円前後もかかります。もし少し進行したがんで乳房全摘出をして、将来乳房温存術を すれば保険適応のタイプもありますが、インプラント法だと自費で100万円くらいかかります。

子育てが終わった世代で、少し経済的余裕がある世代の婦人は「最高の病院で、最高の治療をしたい!」と話される事も多いですが、子育て世代の患者さまは、家族に負担がかからないように、近くの病院、差額ベット0円の6人部屋での治療を希望される方も多いです。

日本では結婚式にはあんなにお金を使うのに、結婚前のエステやネイルアートにはお金を使うのに、人生最大の危機である乳がん治療には、なるべく安く…とい うのは悲しすぎませんか?新婚旅行のホテルは、三つ星でも入院部屋は…。とにかく、がんになると100万円単位に自己負担額がかかります。

乳がんの個人検診は自費で1万円から1万5千円(マンモグラフィー+エコー)。100万円あれば検診60回分。やっぱり、経済的に満足のいく治療を受けるには早期発見!治療より検診、自分のおっぱいは自分で守る!

こうのとり裕子ドクターより

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